I'M ALIVE
「私の最も幸福な日」もしくは「私の最も不幸な日」の二つのトピックのうちどちらかについて作文を書くように英語の先生に言われ、高校生は最も幸福な日を彼の生まれた日の「最初の誕生日」と呼べる物だと書いた。
彼に賛同するだろうか?
彼の作文は以下のようである。
僕の最も幸福な日は誕生日。いいや、毎年来る誕生日ではない、それも幸福な日ではあるけど。
僕の言っているのは私の最初の誕生日。
僕は12月4日に名古屋で生まれた。その瞬間、僕は世界中に向かって聞こえるように産声をあげた。
僕の産声を聞いて両親は喜んでいるようだった。この世界に生まれて僕はなんて幸せだ!
もし僕が生まれてなかったら、花を見ることもできなかっただろう。太陽を見ることもできなかっただろう。友達の顔を見ることもできなかっただろう。愛すことも愛されることもできなかっただろう。
この世界に生まれる前は、真っ暗闇の僕だけの世界に住んでいた。空っぽな暗闇以外なにもなかった。そしてある日突然、僕は光に包まれた!喜びに産声を上げずにはいられなかった。
喜びに自分の足を蹴らずにはいられなかった。
太陽の輝き、しとしとと降る雨、バラの香り、冷えた新鮮なミルク、母の胸の温もり。
僕はその全てを見て、聞いて、嗅いで、食して、感じた。
僕はなんて幸せだったか!
僕は幸せそのものだった!僕は生きている!間違いなく、僕の誕生日は最も幸福な日だ。
母は喜びで我を忘れたと僕は聞く。僕の誕生日は母と僕の二人にとって幸せな日に思える。
ありがとう、お母さん。ありがとう、命を与えてくれて。
命の贈り物への感謝と、生きている喜びはヒットソング「I'm Alive」の中で歌われていた。
生きているーそして夜明けが空を切る
生きているーそしてそら高く日が昇る
異世界に迷い(遥かかなた)、全くの異世界に(今日まで)
だけど何を言えるだろう?生きている、生きている、生きている。
急に夜明けが来た(夜から)
急に私は生まれた(光の中に)
どうやって現実になったのだろう?生きている、生きている、生きている。
AFTER TWENTY YEARS(1)
「家に急いだ方がいいぞ、君たち。少年がこの辺にうろつくには遅すぎる時間だ。この近隣だと、俺たちは早寝するもんだ。」
「わかったよ、お巡りさん。あとほんの数分だから」二人の少年が同時に言った。警察官は歩き続け、右手首に軽く引っ掛けた警棒を振り、閉店した店のインテリアに懐中電灯を当てた。
「『じゃあまたね』って言った方がいいと思うよ。ブラディーの店の時計はちょうど10時を打ったよ」と少年の一人が角にある深夜営業の軽食堂を顎でしゃくって差しながら言った。
彼はとても背が高く肩幅のある少年だった。
「『じゃあね』か『さよなら』かのどっちかになるだろうね。」ともう一人が言った。彼は友達より背が低くて華奢だったが、頭の後ろに挑戦的な角度でかぶっている野球帽から流れ出るウエーブの掛った髪のハンサムな少年だった。
「ともかく、僕は夜明け前に帰るつもりだよ、ジム、だから幸運を祈ってくれ。それが本当に必要になるだろうからね。」
「ボブ、心配するなよ。君はうまくやるよ。君には才能と個性があるんだ。それと、、、、」
「それと僕のポケットには5ドルだ。遠くに行くには十分じゃない。」
「ボブ、西部に行く考えを諦めるっていうのはどうかな。ここニューヨークに留まるっていうのはどうかな。ここには見るものもやることもたくさんあるよ。この町には全てがあるよーー人々、野球のメジャーチームが2つ、ブロードウエー、チャンス、刺激、、、、、」
「この町の人達は、お互いのかかとを踏みつけ始めているんだ。だけど、興奮とチャンスか。いいや、ジム、それらは西部にあるんだ、つまり僕はそこへ行ってそれらを手に入れるのさ。そして、お金もだ。新聞によれば、サンフランシスコは金の山の上に建てられているそうだよ。ちょっと待て、ジムーー僕がダイヤモンドを身に着けて戻ってくるよ。」
ジムは目じりにしわを寄せて笑った。「もし誰かがそれができるなら、君だってできるよ、ボブ。だけど無茶しちゃだめだ(不可能なことを目指しちゃいけないよ)。僕にとっちゃ、いつでも古き良きニューヨークの方がいいんだ。僕はここで生まれ育ったんだ、それにここで人生を送れるなんてこの上なく嬉しいんだ。僕にとっちゃあ、ここが地球上で唯つの場所さ。」
p27
「急いだ方がいい、ケイジー警部がまた来た。」警察官の方を顎でしゃくって差しながらボブが言った。警官は来る途中、ドアを開けてみたり懐中電灯を当てたりしながら、通りの別の側から降りて来ていた。ブラディーの店の時計が30分過ぎを打った。
「なあ、僕には考えがある。僕は18で君は20歳だ。20年たったら僕たちは40歳になる。20年は僕らにとって財産を作り運命を切り開くのには十分な時間だ。いいか、今から20年後の今日この時間にここで会うと約束しよう。」
「ブラディーの店のそば、12月5日10時30分だ。20年後、1905年になっている。いいか、ボブ、その日にだ。僕らがどこにいようとも、僕らはここに戻って来てここで会おう。それで、ブラディーの店のコーヒーをもう一杯飲もう。」
「約束成立だね。」
彼らは厳粛に握手した。「なあ、ボブ、幸運を祈るよ。」ジムは笑おうとしたが、眼にはしわはできなかった。
「またな。ジム。」そう言うとボブはくるりと向きを変え、それ以上ちらりとも後ろを見ないで通りを歩いてくだって行った。
ジムは涙をこらえるために下唇を噛んで、幼少のときからの自分の友達が暗闇の中に歩いて行ってもう戻って来ないのではないかと思いながら、そこに立っていた。