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1/ 誰も水なしにはいきていけない。
それにもかかわらず、国連は水不足に直面している人々が世界に10億人以上おり、そのほとんどが発展途上国であると報告した。
多くのボランティア団体や政府がこの状況を改善するために働いている
恵まれない人々を支援する「ピラミッドの底(BOP)」ビジネスを発展させる動きもある。
BOPは経済的ピラミッドの底辺について言及しているのである。
2/ 莫大な財源を保有する大手企業のみがこの状況を改善する支援のために大したことができると考える人もいる。
しかし、日本ポリグルの創業者兼会長である小田兼利は自身の哲学を持っている。
比較的小さい企業でもこのような改善を推進する潜在力がある、と彼は言う。
事実、小田は安価にきれいな水を提供する手助けにより途上国の人々を支援してきた。
彼の会社はBOPビジネスの成功モデルとしてよく言及されてきた。
3/ 彼のビジネスはどのようにして成功したのだろうか?
安全な水を途上国へ輸出することによってか?
もしくは、特殊な設備で水を浄化することによってか?
どちらも事実ではない。
彼の会社は小田の発明した白い粉を売っているだけだ。
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4/ 彼の会社名にあるポリグルもまた彼の製品の名前なのだ。
小麦粉のようにしか見えないが、奇跡のような機能を提供してくれる。
この粉を汚い水の中に入れ、かき混ぜさえすればよい。
数分後、驚くべき物を見ることになる。
粉は水の中で汚れた物質を吸収し、底で凝固し、浄化されて飲める水のみを残すのだ。
さらに、わずか1gで10リットルの水を浄化することが出来るのだ。
5/ この魔法の製品を発明する前は、小田のビジネスは上手くいっていなかった。
彼は悪戦苦闘している間に、さらに最悪なことすらも経験することになった。
それは阪神淡路大震災だ。
事実これによって彼はポリグルの発明をすることとなった。
地震後のある日、水の配給のために池の側で長い行列待ちをしていた。
誰にとってもこれは時間の浪費であるし疲れるものである。そしてその時小田に一つのアイディアが浮かんだ。
池を見ていると、彼は「この池をきれいで飲める水にできたらどれだけ便利だろう」と考えた。
6/ 6年の試行錯誤の後、ポリグルが発明された。
これは必ずしもビジネスでの成功を意味したわけではなかったのだが。
事実、彼はどこでこの製品が必要とされているかを見つけるまでは、ビジネスが繁盛することはなかった。
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7/ ポリグルの活用を明らかにしたのはもう一つの自然災害だった。
2007年、小田は深刻なサイクロンの被害にあったバングラデシュにそれを送った。
それがいかによく効くかに驚き、バングラデシュ政府は大量のポリグルを購入するよう要請した。
彼のビジネスは成功し始めたが、彼は心配した。「もしポリグルが地方の人々の手に届かないほど高値がついたら、大変なことになるだろう。」
彼は災害の場所へ訪れることを決めた。この決断が思わぬ結果となる。
8/ 多くの人たちが貧困の中暮らすバングラデシュは、小田のビジネスが初めて繁盛した場所である。
彼はボランティア計画の限界を感じており、ビジネスを軌道に乗せ、かつそこの人々が持続可能な生活様式を改善する手助けをする方法を模索した。
彼のアイディアは、その地域の人々、正確にはその地域の女性に販売の委託をした。
バングラデシュのほとんどの女性は社会的地位が非常に低く、彼女たちの多くが仕事を見つけるのが困難であった。
しかし「ポリグル・レディー」はすばらしい販売員となった。
彼ら自身の言語で、他の人たちにポリグルをどのように使うかを実演することによって、彼女たちは人々に、これが生活の質を向上させると納得させることができた。
これはまた女性の経済的な独立をも導いた。
9/ このビジネス様式は3つの領域で物事を発展させた。
小田のビジネス、販売員女性の生活、そして彼らのコミュニティだ。
小田は、ポリグル・レディーの一人が言った言葉を聞いて深く感銘を受けた。
「私たちは未来への夢を持つことは決してできなかった。しかし今ではワラシたちの多くが夢を持っている。」
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10/ 彼が参加した多くのインタビューで、小田は、最初は莫大な利益をあげるために熱中し、死にものぐるいにまでなったと冗談気味に告白した。
しかし、彼が今やっていることは、BOPビジネスの模範であり、利益のためだけではなく地方の人々やコミュニティのために働いている。
彼はまた、自分の心を変えたのはポリグルによって生活が改善された人々の笑顔だと告白する。
11/ 絶望的な状況のある日、小田がひらめいたアイディアは、彼にとってだけではなく彼のビジネスに関わる人々にまで予期せぬ結果をもたらした。
社会での多くの変化は、一人の人間の行動によって始まるのかもしれない。
彼の物語は心に決めるおとがどれだけ重要かということを私たちに示してくれる。
もし私たちがあたりを見回せば、変化しうるものは数多く見つけられるかもしれない。
結局は、時には個々でさえも社会を発展させる力があるということだ。